世田谷にある自宅兼アトリエで愛犬のクンクン(シュナウザー・9歳の女の子)と一緒に私たちを出迎えてくれた阿部さん。彼女はソニーのサイバーショットやCCJCの爽健美茶など、大手メーカーのCMで活躍しているスタイリストだ。
スタイリストの道を歩きはじめたのは、文化服装学院を卒業してすぐのこと。とにかく洋服が好きだったが、具体的に何をしたいか見つけられなかった阿部さんに、当時はまだ一般 的に知られていなかったスタイリストの仕事を勧めたのは学校の先生だった。学校の卒業生で、スタイリストをしていた馬淵正子さんのアシスタントについて1年が経とうとした頃、人の言うことに従うより、自分でやってみたいという思いが強くなった。そして20歳のうちに独立を決意した。
「仕事のことは、今から思うとゾッとするくらいに何も知りませんでした。なのにずうずうしくフリーになって…。アシスタントを一人かかえていましたが、彼女が20歳。私が21歳。仕事の現場では、アシスタントと間違えられることも…(笑)。当時はいつも背伸びをしていた気がします」
自分で仕事をとり、人を使うことを覚えはじめた阿部さんに大きなチャンスが訪れた。知人の紹介で資生堂の「花椿」の編集長・平山景子さんと出会い、ずっとやりたかった「花椿」の仕事をすることになったのだ。
「まず担当させてもらったのは情報ページでした。海外から編集長に直接届く情報をもとに商品を集めるのですが、その情報にフィットするモノが日本にはまだない。トラック1台分の中で使えるものは10分の1ほどでしたね(笑)」
厳しい目を持つ編集長に認められ、鍛えられ、後にメインページのスタイリングも担当することに。と同時に、一緒に仕事をしていたカメラマンを通 じてCMのスタイリングを任されるようになる。仕事が軌道にのり、スタイリストとしても売れ始めたこの時期はまさに、子どもを出産し、育児をスタートした時期でもあった。 |