「やりたいこと」と「子育て」のジレンマ
今ががんばり時、と言い聞かせる日々
一人で子どもを育てながら、やりたいことに情熱を注ぐ。それは生半可な気持ちではできない。生活していくために、マコさんは小さな出版社に就職したが、仕事と育児に追われ、やりたいこともできず、半年と経たぬうちに体調を崩してしまった。
「どんなに生活が大変でも、本当にやりたいことをやろう!」
収入は激減するが会社を辞め、スポーツクラブでアルバイトをする傍ら、「産後のボディケア&フィットネス教室」を主宰。現場の声を聞きながら、産後ケアについて研究を重ねていった。
「あの頃は本当に大変でした。スポーツクラブ以外にも専門学校の講師などのバイトを掛け持ちして…(苦笑)。でも、やりたいことができる充実感はありました。自分が主宰する教室での反応をみると、『産後ケアは求められている!』という手応えがありましたから。だからこそ、もっと勉強したい。でもその一方で、子どもは親である“私”を求めている。ジレンマでした…」
どうしても受けたいレッスンが夜しか開催されず、実家の母や友人たちに子どもを預けて出席したこともあった。けれど、そういうときに限って子どもはおねしょする。3歳になり、おむつが外れていたにもかかわらず。
「気持ちが不安定になっていたんでしょうね。母からは『ちゃんと子どものことも見てあげないと…』って(苦笑)。当時はよく日記に書きました。『あのときは大変だったけど、がんばったからこそ今がある。いつかそう思えるはず』って」
そんなつらい時期のマコさんを癒してくれたのは、保育園のおかあさん仲間だ。「彼女たちはまったく利害関係のない存在。そんな人たちとの他愛のないおしゃべりは楽しいし、心がなごみます。今もそう。子どものサッカー仲間のおかあさんたちと楽しく付き合っています(笑)」
日本にも充実した産後ケアを!
個人での活動からNPO法人化へ
マコさんの「産後のボディケア&フィットネス教室」は今や全国各地で展開。インストラクターの養成も行い、一連の活動は「マドレボニータ」と名付けられている。
「これは、スペイン語で『美しい母』の意。キレイなママといった表面的な美ではなく、人としてのディープな美しさを追究したいと思っています」
出産をきっかけに、女性が心や体に向き合い、産後の適切なケアに取り組み、心身ともに健康な状態で子育てをスタートさせることができれば、パートナーや子どもと良好な関係が築けるのではないか?
さらに、育児ノイローゼや乳幼児の虐待といった悲惨な状態も回避できるのではないか? そう考えるマコさんは、日本の母子保健システムに、妊娠、出産、産後という「周産期の女性の健康をめぐる途切れないサポート」を確立させるための一助として、昨年、マドレボニータをNPO法人化させた。
「これはビジネスではなく、“産後”という新しい分野の開拓です。誰もやらないなら、私がやる。そんな思いで始めた活動でしたが、続けていくうちに、これは国レベルで行うべき取り組みだと実感。社会的な信用を得るためにも、NPO法人というカタチがいちばんふさわしいと判断しました」
“美しい母がふえれば、世界はもっとよくなる”。これがマドレボニータのスローガンだ。そしてめざすのは、母となったすべての女性が、良質な産後ケアを受けられるような社会―――。最初の一歩を踏み出してから10年、今、マコさんの活動は新たなステージを迎えている。
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