1965年、東京都生まれ。女子美術大学短期大学部生活デザイン科卒業。モデルや広告代理店などの仕事をしていたとき、第一子を妊娠して結婚。初産時より産前教育や産後精神保健に関心を持ち、妊娠・出産の生理やサポート、出産準備教育、心理学などを学ぶ。1997年に妊娠前から学べる「桃の花クラブバースクラス」を助産師と開講。2003年にバースセンス研究所を設立し、女性の生き方や出産・育児を学ぶスクール、講演などで活躍。17歳(長男)15歳(長女)11歳(次女)7歳(三女)3歳(次男)と5人の子どもがいる。著書に『えらぶお産』『いのちはどこからくるの?9才までに伝える誕生のしくみ』など著書多数。
「人間はホモサピエンスとして何万年も自分の力でお産をして きたんですよ」現在の日本での出産や育児の情報といえば負のイメージがついつい先行してしまう。「自分が本来持っている力を使えばお産はもっと楽しくなるはず。産んでよかったと思える女性を増やし、生まれてきてよかったと思える子どもを増やす。うれしくて楽しく美しいお産をするにはどうしたらいいか、自分の力を使っていくにはどうしたらよいかという『生きる智恵』を伝えるのがバースコーディネーターの仕事です」 大葉さんはもともと「ゼロから生み出すこと、創り出すこと」が大好きだったという。中学生の頃から部屋のカーテンやベッドカバーなど自分で作ったり、美術短大では生活デザインを専攻しインテリアデザインや建築、木工から金工、陶芸などあらゆるクラフトを学んだ。 一方でモデルやテレビCMなどで活躍。「オーディションは日々自分を試しているようでした。落ちることもあれば採用されるときもある。落ちるということは”私じゃなくてもいい”ということ。逆に採用されるということは “それには私が必要だ”ということ。落ちたって自分が悪いわけではないんですよね。自分はつくろわなくていいんだ、ありのままの自分でいることが一番なんだ」オンリーワンの自分、ナチュラルであることの大切さを十代にして確立していた。 好奇心旺盛で雑誌の仕事などで20歳の段階ですでに8カ国に行っていた大葉さんが妊娠したのは22歳のとき。「アメリカに留学しようと思っていたんです。それが母親大学に入学することになって」 出産を選ぶことをすんなり受け入れられたのだろうか。「自分の中から新しい命がはじまろうとしているということはインパクトが大きかった。体験することには全部『縁』があると思うんです。だから妊娠したときも母親になれってことなんだなあと思って」すべてが人生のプレゼントだと考える大葉さんは母親になることに迷いはなかったようだ。「ただ、お産がみんなと一緒だというのはおかしいと思いました。人それぞれ自分のリズムがあるはずだと」自ら「お産おたく」という大葉さんは初産のときから妊娠・出産について心と体の両面 の勉強をしてきたという。 「出産も育児もこうあるべきだ、という外側の定規に合わせるからつらくなる。人それぞれ、その時々で最善を尽くす、コンパスで今はこんな角度、この人はこんな角度って自由自在に変わるように出産や育児もあるはずなんですよ。私も5人産んでいるけど 、5回ともそれぞれみんな違う」 大葉さんは出産しても仕事を続け、自分にしかできないことは?と考えるうちにバースコーディネーターというオリジナルな仕事を生み出した。「第2子出産以降、育児テレビのパーソナリティーの仕事をいただいて。出産準備教育の勉強はもちろん、それが縁でいろんな方と知り合ったのが今の仕事にもつながっています」 もちろんすべてが順調だったわけではない。「テレビの仕事をしていた頃は本当に忙しくて。ベビーシッターを探すのに大学の掲示板にバイト募集の紙を貼ったり、コンビニでトリマーの専門学校に行っている生徒さんをスカウトしたり。いろんな手を使いました」大葉さんのやり方はいつもオリジナルだ。「型にはまったこと、はめることが苦手なんです」
現在、5人のお子さんは17歳の長男をはじめ下は3歳。「夫も含め5人それぞれとデートする時間、1対1で向き合う時間を作っています」 忙しい大葉さんに「最近、○○(お子さんの名前)とデートしてる?」などとだんな様が子どもの様子を見ていってくることも多いそう。「家族みんな一緒の時間も大事だけど、それぞれと向き合う時間っていうのも大事だと思うんですよ。大人が自分の人生をどう生きるかをきちんと見せることで子どもも成長していく自分のことを考えられる」仕事と家庭という垣根がなく、充実した毎日を過ごしていることがうかがえる。 「おいで!生まれてきたい子どもたち」という気持ちでいつも仕事をしているという。 バースセンス研究所では、妊娠前・妊娠中・出産後、またカップルで通える講座などを運営している。子どもが欲しいなという女性を応援するクラス 、産むのが怖いという女性には「体には本来こんな力が備わっている。だから産むのは怖くないよ」と教えるクラス、ベビーマッサージやヨガなど心と体の両面 から女性やカップルをサポートしている。 また、行政で行っている母親学級で教えたりテレビの出産シーンの監修もしている。「子どもは親を苦しめるために生まれてくるわけではないんです。お産は痛くてつらいだけのものではない。うれしく楽しい面を、もっとみんなにも知ってほしい」 「誕生学」というプログラムを保育園や学校で教えるのも大事な仕事のひとつだ。「本来持っている誕生の仕組みをビデオなどを使って教えます。授業が終わった後に小学生が『子どもを産むのが楽しみになった』『お前はバカだって言われていたけど、ぼくはこんなに生まれる力を持って生まれてきたんだからバカじゃない』と目を輝かせていってくれるんですよ。女子高で出産のビデオを見せたときもヤンキーの子のほうが熱心だったり」小学生の授業では親も一緒に受けてもらう。「子どもが生まれたときのうれしい気持ちを子どもに伝えて欲しいんです」 心が生きると書いて「性」、性は隠すことでもいやらしいことでもない。きちんとした性教育を子どもに行うことは命を大事にするということにもつながる。大葉さんのお話を伺っていると、お産に対する「つらくて痛い」というイメージ、性に対する負のイメージがハッピーなイメージに変わっていく。 「産み方は生き方なんですよ。どう子どもを産むか考えることはどう未来を迎えるかを考えること。心が開いていけば体も自然に開いていく。医療に任せすぎず自分の体の力を使っていくことが大事なんです」 バースコーディネーターの養成講座も開講しており、第一期生が来年の三月に卒業するという。「養成講座は途中出産しても産休後すぐに勉強を始められるように半年ごとにプログラムを学べるようになっています。講座の途中に妊娠する人も多いんですよ(笑)」 バースコーディネーターは社会構造の中でこじれた糸をほぐすような仕事だとも大葉さんはいう。「子どもを産むにせよ産まないにせよ世の中の大人が子どもを温かく受け入れ、みんなで子どもを育てていく社会。そんな豊かな国にしたいですよね」やわらかい笑顔の中に太い根(信念)を感じた。卒業するバースコーディネーターの活躍が今からとても楽しみだ。