楽しく生きる、カッコよく生きる 
mamalive Interview
株式会社マザーネット 上田理恵子さん
上田理恵子さん
上田理恵子さん


1961年島根県米子市生まれ、大阪育ち。大学卒業後、大手機械製品メーカーに就職。商品開発や新規事業開発に携わる。社内ベンチャー制度の評価委員も兼務。'94年7月「キャリアと家庭」両立をめざす会を設立。'97年ワーキングマザー向け月刊情報誌『Career&Family』創刊。2001年に会社を辞めて、自身の仕事と家事・子育ての両立に悩んだ経験を生かして、ワーキングマザーの総合的な支援を目的とする株式会社マザーネットを立ち上げる。家庭に“ケアリスト”と呼ばれるスタッフを派遣し、行政や既存のサービスでは行えないような、家事・育児に対する細かいニーズに応えている。
2003年度大阪市きらめき賞、大阪府女性基金プリムラ奨励賞(個人)受賞
2004年6月より、大阪市都市経営諮問委員

上田理恵子さん 上田理恵子さん  

「子どもを預けているからこそ、いい仕事がしたい」というのは、ワーキングマザーなら誰もが思うこと。そんな当たり前の気持ちに、行政や企業も前向きに取り組みながらもまだまだ応えきれていないというのが実情だ。マザーネットは、その隙間を埋めるかのようなきめ細やかなサービスを提供している会社だ。マザーネットの社長・上田理恵子さんは、一人ひとりのママの声に耳を傾け、行政や他の会社では行っていないサービスを創り上げている。

上田さんは大学卒業と同時に大手メーカーに就職し、男性社会の中で自分なりにキャリアを積み上げてきた。それが、妊娠・出産を経て、職場復帰したときに、席はあったが自分のポジションは無かった。会社としては小さな子どもを抱える母親への配慮としての配置だったが、本人の希望とのズレが生じていた。働きたいという母親にもいろいろ理由はあるけれど、いい仕事がしたいという気持ちは同じ。
「確かに母親は自分しかいません。でも、社会の一員として生まれてきた意味があると思うんです」上田さんはその意味を見つけるためにも、会社で働きながらも休日を利用して、ワーキングマザーの悩みや思いを語り合える場「キャリアと家庭」両立をめざす会を設立した。この会がマザーネットの前身となった。

当時、お茶くみ、コピー取りといった一般事務の仕事しかなく、それまでのキャリアを職場で生かしきれないというフラストレーションを抱えていた上田さんに先輩ママが言った言葉がある。それは「あなたは間違っている。どんな仕事からも得られるものがある」ということ。上田さんはその言葉に目が覚めたと言う。そして「私はお茶くみのプロになる」と決意した。それからは、上司やお客様のお茶の好みから、コーヒーにお砂糖をいくつ入れるか、ミルクは入れるかだけでなく、減量中である、体調が良くないなどにも気を配るようになった。一日にお茶を180杯淹れた日もある。与えられた仕事に楽しさとやりがいを見出しながらも、「もっと仕事がしたい」という思いは心の中でどんどん大きくなっていった。上田さんにようやく担当の仕事が与えられたのは2年後のことだった。それはワーキングマザーにとってはつらい営業の仕事だった。

小さな子どもが二人いる。男性と同じように営業の仕事をする。子どもが病気のときは2倍大変だった。二人だとカゼも水ぼうそうなどの感染症もうつしあいっこだ。
「営業先に10時に行くと約束していた朝、そんな日にかぎって子どもが39度の熱を出すんです。そうなるともうパニック。保育園にも行かせられないし頭の中は真っ白です。少し離れたところに母が住んでいるので、なんとかお願いして、営業先で待ち合わせて、子どもを預けたこともあります。電車の中で、子どものおでこを窓ガラスにあてて熱を冷ましたこともありました。この時のことを思い出すと、今も心が痛みます」
男性と同じ立場で仕事をするワーキングマザーの苦労は想像以上だった。クライアントとの約束時間を午後にするなど、仕事の面でもいろんな工夫が必要だ。契約にこぎつけるための値交渉が長引き、保育園のお迎えの時間が迫ってくる。もちろんご主人や両親も協力してくれるが、身も心も忙しい毎日を繰り返し、「キャリアと家庭」両立をめざす会に救われながらも、胃にポリープができるほどストレスが重なった。

上田理恵子さん
 
絵本


働くママを応援しながら、自分も悩みを共有している。そんな状況に矛盾を感じていた上田さんの背中を押したのは、意外にも息子さんからの問いかけだった。
「夜眠るとき、子どもに絵本を読みますよね。でも私は電気を消して、絵本の代わりに子どもの夢を聞いたり自分の夢を話していました。小学生になったお兄ちゃんが一流の野球選手になるという夢に不安を感じていたときに、『やってもないのになんであきらめるの!』と叱ったんです。すると息子が『お母さんの夢はどうしたの?』と聞いてきたんです」
ママの夢の実現のために、息子さんたちは自分の貯金箱にあるお金を使ってほしいと言い出した。「自分が夢を叶えなければ、子供が夢をえがけない」と、上田さんは資金もないところからマザーネットをつくるために動きはじめた。このエピソードはマザーネット主催の起業塾の参加メンバーによって、小さな絵本になっている。

現在、マザーネットの会員は約500名。会員の方や会員以外の方からの手紙やメール、ファックスでの悩み相談が3万件を越えた。
「これだけ多くの人のいろんな声を聞いているということは、神様が私に何かやれと言っているんだと思うんです。マザーネットでは、行政や企業がすでに行っていることはあえてやらずに紹介して、誰もてがけていない、ワーキングマザーが今本当に困っていることを解決するサービスに取り組んでいます」

マザーネットのサービスはすべてリアルな声から生まれている。もちろん病気の子どももケアする。子どもの宿題を見たり、ピアノを教えたり、小学校の長期休みに信州での自然体験スクールサービスも行っている。他にも夕食づくりなどの家事代行や、育児休暇復帰準備セミナーや女性のための起業塾など、実際のニーズから独自のカテゴリーが生まれている。
「今、それぞれのビジネスに基礎ができたところです。それをこれからどう展開していくかが目下の課題ですね。時代が変われば、求められるものも変わります。マザーネットがあることで、一人でも多くのワーキングマザーが安心できたり、気持ちがラクになればいいと思います」時代の流れを見つめながら、今、本当に必要とされるサービスを提供し続けることで、上田さんの想いはひとつひとつカタチになっていく。

 
かまくら
 
Q1. いま一番やってみたいことは?
八ヶ岳の山小屋でアルバイトをしたい。
できれば子どもたちと一緒に。
山を登ってきた人を笑顔で迎えたいですね。

Q2. 自分のどこをほめられるとうれしい?
「あきらめないね」「ねばり強いね」と言われると
がんばろう!という気になります。

Q3. 今までで一番はずかしかったことは?
講演会などで「先生」と呼ばれて、天狗になりそうな自分に
気づいたときは ひとりではずかしい気持ちになります。

Q4. 最近いつ泣いた?その理由は?
よく泣くんですよ。テレビのドラマを見ているときに。 子どもに「お母さん、いま泣きかけやでー」なんてつっこみを入れられます(笑)。
Q5. あなたがすごく感動した映画は?
マザーネットが手掛けるケアサービスの現場では毎日感動しています。
一軒一軒にドラマがあるんです。 実話にまさる感動はなし、ですね。